イモリネットワークの歴史
New Newt Network Project (NNN project)


  本コミュニティーは、日本動物学会で30年近く活動してきた「イモリ・胚誘導研究会」にその起源を持ちます。「イモリ・胚誘導研究会」は、もともと「胚誘導と形態形成」研究会として、浅島誠先生(東大)らの努力により1981年に設立され、毎年1回、日本動物学会の場で研究成果を公開・討論し、積極的に研究交流を行ってきました。1991年に、実験動物としてのイモリの優位性を再認識することを念頭に、鬼武一夫先生(山形大)により「イモリネットワーク」研究会が新たに発足しました。「イモリネットワーク」研究会は、「胚誘導と形態形成」研究会と連携して、イモリにおける形態形成・再生・生殖等の特色ある研究成果を積極的に公開・討論することとし、「イモリ・胚誘導研究会」として活動しています(「胚誘導と形態形成」・「イモリネットワーク」共催シンポジウムの歩みをご覧ください)。

○イモリ研究環境の変化
 しかし、残念ながら、ここ10数年の間に実験動物の座はイモリから他のモデル動物に移り、イモリを扱う研究者は減少してしまいました。こうした状況の中、安部眞一先生(熊本大)が生殖・発生・再生分野のイモリ研究者(主にイモリ・胚誘導研究会のメンバー)に呼びかけ、さらには生理学・行動学分野の研究者も結集して、イモリ研究を活性化しようと努力されました(2003-2005年)。2006年に千葉親文(筑波大)がその志を受け継ぎましたが、計画は思うように進まず、しかも同じ年、我が国のイモリ研究を支えてきたアカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)が準絶滅危惧種に指定された(環境省レッドデータブック)ことから、このままでは研究資源の面からも構想の実現は困難な状況となりました。

○(新)イモリネットワーク[Japan Newt Research Community]の創設
  このような研究環境の変化にも関わらず、イモリ研究の重要性は依然として明らかであることから、2007年9月の第78回日本動物学会(弘前大会)から千葉親文(筑波大)と芋川浩(福岡県立大)が中心となりアカハライモリの資源化/モデル動物化を含む大型プロジェクトの準備(フィージビリティ・スタディ)を開始しました。この段階で、「イモリ遺伝子情報(EST/cDNA/ゲノム)や実験技術等の情報の共有化(統合データベースの構築)」、「イモリ巨大未知ゲノムの解読用アルゴリズムの開発」、「野生イモリの生息状況の把握、および野生イモリ系統の同定と保存(保護・保全)」、「研究・教育用イモリ(野生イモリ系統、ラボイモリ/遺伝子改変イモリ系統)の安定供給に向けた取り組み」の重要性がクローズアップされ、それらの実現に向けて組織の強化が必要となりました。そのため、情報工学分野の研究者や水棲動物の調査・保全・保護にたずさわる生態・環境/系統・進化の研究者、およびこれらに関心のある市民団体や自治体にも協力を呼びかけ、2008年1月に彼らが合流した新たな研究グループを発足させました。
  2008年9月の第79回日本動物学会(福岡大会)、イモリ・胚誘導研究会との連絡・調整を経て、10月からこの研究グループは正式に「イモリネットワーク」研究会を継承する新組織として活動を開始することになりました。

  New Newt Network Project (NNN project;トリプルNプロジェクト): 現在、私達「イモリネットワーク」はイモリ研究を活性化すべく、研究予算/事業費の獲得に努力するとともに、ホームページ(将来の統合データベースの入り口)の作製と管理、「イモリ研究の歩み」編集・データベース化、書籍の企画・出版、シンポジウムや市民公開講座の企画・開催など、情報基盤の整備と啓発活動に取り組んでおります。私達はこれらの取り組みをNNN project(安部眞一先生が付けてくださいました)と呼んでおります。